データセンターの電力不足はなぜ起きるのか|需要の見通しと系統制約、3つの解決アプローチ


AIの利用が広がるなか、国内でもデータセンターの新設計画が相次いでいます。一方で、計画を進めるうえで大きな制約として挙げられるようになったのが「電力」です。用地を確保できても、そこに引き込める電力がなければデータセンターは動きません。

電力確保の課題は、電源の確保だけにとどまりません。日本の再生可能エネルギーには、現在の発電電力量の最大2倍に相当する導入ポテンシャルがあると推計されています※1。ただし実際にどれだけ導入できるかは、系統の状況や事業採算性によって決まります。発電した電気を必要な場所まで運ぶ送電網や変電設備の容量にも制約があり、これが電力確保の難しさにつながっています。

本記事では、データセンターの電力需要がどこまで増えるのかという見通しから、その電力がなぜ確保しにくいのかという系統側の構造、そして解決に向けた選択肢までを整理します。数値の出典は記事末尾にまとめて記載しています。

データセンターの電力問題とは何か

AIサーバーの高密度化と受電容量の制約

従来のデータセンターは、ウェブサービスや企業の基幹システムを支えるサーバーが中心でした。生成AIの普及によってその構成が変わり、GPUを大量に搭載したAIサーバーの比重が高まっています。

AIサーバーは、従来型のサーバーと比べてラックあたりの消費電力が大きく、それにともなって発熱量も増えます。同じ床面積であっても必要な電力が増え、冷却設備の負荷も上がります。そのため、データセンターの規模は延床面積ではなく受電容量で語られる場面が増えました。

規模感を具体的に見てみます。日本データセンター協会が規制改革推進会議に提出した資料によれば、AI向けサーバーは多数のGPUによる処理を支えるために短時間で大量の電力を消費し、ひとつのラックで数十kWから100kWを優に超える電力を消費します。電話ボックスほどの空間で、一般家庭の数十軒分から100軒分に相当する電力を使う計算です※2。

さらに、AIの演算プロセスには急激な電力変動という特有の性質があります。電力のピークが急に高くなり、電圧も不安定になりやすい。このため次世代のAIデータセンターでは、サーバーラックごとにリチウムイオン蓄電池を分散配置する方式の採用が進んでいます※2。

こうした事情から、データセンターを建てられるかどうかは、用地の有無だけでなく、その場所に十分な電力を引き込めるかどうかに左右されるようになってきました。

電源の確保と系統の制約

電力が確保しにくい理由は、ひとつではありません。後述するとおり、再生可能エネルギーの導入ポテンシャル自体は大きいと推計されていますが、それが実際に使える電力になるまでには、発電設備の建設に加えて、送電網や変電設備の容量という制約が関わってきます。

問題は、そのポテンシャルが偏在していることです。太陽光や風力の適地は北海道や九州に集中する一方、データセンターの立地需要は東京圏や関西圏に集中しています。両者をつなぐ送電網の容量には限りがあり、そこがボトルネックになっています。

そのため、データセンターの電力問題は、電源の確保と送電・変電設備の容量の両面から考える必要があります。発電した電気をどこで使うのか、どうやって運ぶのか、需要と供給の時間的なずれをどう埋めるのか。電力系統をめぐる問題として捉える必要があります。

データセンターの電力需要はどこまで増えるのか

2050年までの需要増加の見通し

データセンターの電力需要が今後どこまで増えるのかについては、複数の推計があります。

パワーエックスが将来の電源構成をシミュレーションする際の前提では、科学技術振興機構(JST)のOptimisticケースを想定した場合に現状から2050年にかけて96TWhの増加、電力広域的運営推進機関(OCCTO)の「将来の電力需給シナリオに関する検討会」を参照した場合は140TWhの増加が見込まれています※3。

この規模感をつかむために、日本全体の数字と並べてみます。2024年度の日本の発電電力量は9,911億kWh、およそ991TWhでした※4。96TWhから140TWhという増加分は、現在の日本の年間発電電力量のおよそ1割から1割4分に相当します。

これは日本に限った話ではありません。国際エネルギー機関(IEA)は2025年4月の報告書「Energy and AI」で、世界のデータセンターの電力消費量が2030年までに約945TWhとなり、2024年の水準から倍増するとの見通しを示しています※5。約945TWhは、日本の年間発電電力量に迫る規模です。

データセンターの電力需要は、いまや将来の電力需給を見通すうえで欠かせない前提条件のひとつになっています。

AI活用の広がりと日本の計算資源

データセンターの電力需要が増える背景には、AI利用の拡大があります。そしてAI利用が拡大する背景には、日本社会が直面している構造的な事情があります。

国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2025年から2040年にかけて、15歳から64歳までの生産年齢人口は約15%減少し、0歳から14歳までの年少人口は約16%減少します。一方で65歳以上人口は約8%増加します※6。働き手が減り、支えられる側が増えるという構図です。

これにともなう労働力の不足幅は、2030年に666万人、2035年には857万人にのぼるという推計があります。この不足をどう埋めるかという文脈で、AIによる労働の代替が選択肢として検討されるようになりました。同じ推計では、AIの利活用によって2035年時点で業種・職種平均17.2%の労働時間削減効果が見込まれ、就業者数に換算すると1,170万人分に相当するとされています※7。

ただし、注意すべき点があります。AIによる代替効果が高いとされるのは、事務、金融、情報通信、学術研究・専門技術サービスといったホワイトカラー中心の分野です※7。一方、厚生労働省の雇用動向調査で欠員率が高いのは、輸送・機械運転従事者や建設・採掘従事者(いずれも6.7%)、保安職業従事者(5.4%)、宿泊業・飲食サービス業(4.8%)、運輸業・郵便業(4.1%)といった分野です※8。

つまり、人手不足がもっとも深刻な領域と、AIが代替しやすい領域にはずれがあります。それでもAIの利用は拡大していくと考えられます。ホワイトカラー業務の効率化によって生まれた余力を人手不足分野に振り向ける流れが進むほど、計算需要は増え、それを支えるデータセンターの電力需要も増えていくことになります。

一方で、その需要を受け止める国内の計算基盤は限られています。データセンター全体のうちAIサーバー向けに割り当てられている電力容量を日米で比較すると、米国が約790万kWであるのに対し、日本は約7万kWと推定されます。その差は100倍以上です※9。

この数値は、日米それぞれの調査データをもとに、パワーエックスが一定の前提を置いて換算した推計値です。前提の詳細は記事末尾の注釈に記載しています。単純な比較には限界がありますが、桁がふたつ違うという点は、国内の計算資源が相対的に手薄であることを示していると言えます。

計算資源の確保は、産業競争力だけの問題にとどまりません。データを国内に置けるかどうか、AIの基盤技術を自国で持てるかどうかは、経済安全保障やプライバシー、産業機密の観点からも論点になります。国内でデータセンターを増やすという要請は、こうした背景から生まれています。

データセンターの電力確保を難しくする日本の系統制約

再生可能エネルギーの導入ポテンシャルと実際の受け入れ余力

ここからは、供給側の話に移ります。

環境省の推計によれば、日本には再生可能エネルギーだけでも、現在の発電電力量の最大2倍に相当する導入ポテンシャルがあるとされています※1。洋上風力と太陽光が大きな割合を占めます。

ただし、この数字の読み方には注意が必要です。導入ポテンシャルは、賦存量から法令等による制約や事業採算性を除いて算出した推計値であり、環境省自身が「導入可能量ではない」と明記しています。また、売電価格をFIT価格程度と想定した高位のシナリオにおける値です。そのまま導入できる量ではない、という前提で見る必要があります※1。

そのうえで、地域ごとの数字を見ていきます。ポテンシャルが大きい地域ほど、実際に受け入れられる量との差が開いているためです。

九州エリアには、太陽光と風力を合わせて約131GWの再生可能エネルギーポテンシャルがあると推計されます※10。一方、九州エリアの最大電力需要は約16GWで※11、これはポテンシャルの12.2%に相当します。さらに本州へ電気を送るための系統連系線の容量は2.2GW※12、ポテンシャルの1.7%です。この2つを足し合わせた値は、ポテンシャルの13.9%にあたります。これは需要と連系線容量の規模感をポテンシャルと対比した参考値であり、実際にどれだけ導入できるかは系統の状況や事業採算性によって決まります。

北海道エリアではこの差がさらに大きくなります。ポテンシャルは約318GWと九州の2倍以上ありますが※10、北海道エリアの最大電力需要は約5GW(1.6%)※11、本州への系統連系線の容量は0.9GW(0.3%)※12。足し合わせると1.9%にあたります。ポテンシャルの規模に対して、域内の需要と本州へ送れる容量は限られているという関係が読み取れます。

発電に適した場所はある。しかし、そこで発電した電気を使う需要も、需要地へ運ぶ手段も限られている。この組み合わせが、データセンターの電力確保を難しくしている要因のひとつと考えられます。

系統連系線の増強計画と時間軸

系統連系線の増強が進んでいないわけではありません。

北海道本州間連系設備は2028年3月に300MW(0.3GW)が増設され、合計1.2GWとなる予定です。中国九州間連系線についても、2039年3月に1,000MW(1.0GW)が増設され、合計3.2GWとなる予定です※12。

ただし、318GWと見積もられたポテンシャルに対して1.2GWという規模感、そして2039年という時間軸を踏まえると、増強だけでこの構造が解消されると見込むのは難しい状況です。データセンターの新設計画は、それよりも短いサイクルで動いています。

なお、この需給の時間的・地理的なずれを埋める手段として近年導入が進んでいるのが系統用蓄電池です。仕組みや役割については「系統用蓄電池とは」で詳しく解説しています。

データセンターの電力問題を解く3つのアプローチ

系統を増強して電力を送る

もっとも直接的な解決策は、送電網そのものを太くすることです。

ただし、これには相応のコストと時間がかかります。北海道と東京を結ぶ高圧直流送電(HVDC)の送電ケーブルは1kmあたり5億円から9.2億円と試算されており、陸上ルートではさらに費用が加算されます。工期は10年以上を要します※13。

系統増強は中長期的に重要な取り組みですが、いま計画が進んでいるデータセンターの電力需要に、この時間軸で応えるのは容易ではありません。

発電適地にデータセンターを設置する

もうひとつの考え方が、送るものを変えるというアプローチです。

発電に適した場所にデータセンターを設置し、そこで電力(ワット)を計算という価値(ビット)に変換したうえで、光ファイバーで需要地に送る。こうすることで、送電容量の制約を迂回できる可能性があります。

コストの桁が大きく異なります。配電網の光化にかかる光ケーブルの費用は1kmあたり120万円から250万円、海底光ケーブルでも1kmあたり数千万円程度です。工期は1年から4年程度です※14。送電ケーブルと比べると、配電網の光化なら200分の1から760分の1、海底光ケーブルでも50分の1から90分の1の費用にとどまり、工期も短くなります。なお、ここで比較しているのはケーブルの敷設単価であり、データセンターの建設費や電源設備・通信設備を含む総事業費の比較ではありません。

北海道や九州のように再生可能エネルギーの受け入れ余力が課題となっている地域にデータセンターを置き、そこで生まれた計算結果を需要地に届ける。この発想の転換によって、系統増強を待たずにAIの計算需要に応えられる可能性があります。

データセンター側で電力を調整する

3つめは、データセンターを、電力を消費するだけの設備ではなく、電力系統の状況に合わせて動く設備として捉え直すアプローチです。

系統の状況に応じて演算の負荷そのものを調整する取り組みが、海外では実証段階に入っています。蓄電池を併設すれば、調整できる幅はさらに広がります。

また、こうした構成を実現するには、データセンターそのものの作り方も変わります。従来の建屋型に加えて、工場であらかじめ製造したコンテナ型のデータセンターを設置する方式が広がりつつあります。詳しくは「コンテナ型データセンターとは」をご覧ください。

データセンターの立地条件はこれからどう変わるか

データセンターをどこに、どれだけ作るのかという問いは、日本の産業構造にも関わります。

この先に想定されるシナリオは、大きく3つに整理できます。

1つ目は、国内計算基盤産業を育成するシナリオです。半導体やファウンドリの国内産業基盤の育成と歩調を合わせ、大規模言語モデルを自前で開発できる計算基盤を国内に持つという方向性です。

2つ目は、AIの基盤技術は海外に依存しつつ、物理的なサーバーは国内に置くというシナリオです。安全保障、プライバシー、産業機密の観点から見た最低限のベースラインにあたります。

3つ目は、基盤技術もクラウド・データセンターも海外に依存するシナリオです。この場合、データだけでなく、知見・技術・人材、さらには競争優位性そのものが国外に流出するリスクが指摘されています。

どのシナリオを選ぶにせよ、国内にデータセンターを置くのであれば、電力をどう確保するかという問いは避けて通れません。

これまで、データセンターの立地は通信の遅延、地盤の安定性、用地の広さといった条件で語られてきました。ここに電力という軸が加わったことで、条件は変わりつつあります。再生可能エネルギーが豊富で、系統の制約から発電した電気を活かしきれていない地域は、これまでデータセンターの適地とは見なされてきませんでした。しかし電力の確保が大きな制約となるなかで、発電適地がデータセンターの適地となる可能性が出てきています。

需要地に近い場所には小規模なデータセンターを、発電適地には大規模なデータセンターを配置し、両者を光ファイバーで結ぶ。こうした分散型の構成が、今後の選択肢として現実味を帯びてきています。

まとめ|データセンターの電力問題を理解し、最適な立地・電源計画を

本記事の要点を整理します。

日本の再生可能エネルギーには現在の発電電力量の最大2倍と見積もられる導入ポテンシャルがあります。ただし実際にどれだけ導入できるかは、系統の状況や事業採算性によって決まります。参考として、エリア内の最大電力需要と本州への連系線容量を合計した値をポテンシャルと比べると、北海道で1.9%、九州で13.9%という比率になります。

一方で、AI利用の拡大にともなうデータセンターの電力需要は、2050年に向けて96TWhから140TWhの増加が見込まれています。日本のAIサーバー向け電力容量は米国の100分の1以下と推定され、国内の計算基盤を増やす必要性は高まっています。

この2つを両立させる方向性として、系統の増強、発電適地への立地とデータの光伝送、そしてデータセンター自身による電力調整という3つのアプローチがあります。いずれも、電力設備とデータセンターを切り離さずに設計するという発想を必要とします。

なお、系統の需給調整を担う系統用蓄電池が、どのような仕組みで収益を得ているのかについては、「系統用蓄電池のビジネスモデル」で詳しく解説しています。

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本文中の※番号は、以下の出典に対応しています。

※1. 再生可能エネルギーの導入ポテンシャル:環境省「再生可能エネルギー情報提供システム(REPOS)」に基づく2019年度推計。売電価格をFIT価格程度と想定した高位シナリオにおける値であり、賦存量から法令等による制約や事業採算性を除いて算出した推計値です。環境省は導入可能量ではないとしています。当社決算説明資料では、資源エネルギー庁「今後の再生可能エネルギー政策について」(2021年3月1日)を出典として引用しています。

※2. ラックあたりの消費電力およびAI演算時の電力変動:特定非営利活動法人日本データセンター協会「次世代AIデータセンター社会実装促進に向けたサーバーホール内リチウムイオン蓄電池にかかわる規制改革提言」(規制改革推進会議 デジタル・AIワーキンググループ説明資料、令和8年5月15日)

※3. 電力需要の見通し:当社の電源構成シミュレーションにおける前提。科学技術振興機構(JST)のOptimisticケース、および電力広域的運営推進機関(OCCTO)「将来の電力需給シナリオに関する検討会」を参照。

※4. 日本の発電電力量:資源エネルギー庁「令和6年度(2024年度)エネルギー需給実績(確報)」(2026年4月14日公表)。2024年度の発電電力量は9,911億kWh。

※5. 世界のデータセンターの電力消費量見通し:国際エネルギー機関(IEA)「Energy and AI」(2025年4月10日公表)

※6. 将来推計人口:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)結果の概要」

※7. 労働力不足幅およびAI利活用による労働時間削減効果:みずほリサーチ&テクノロジーズ「AIは人手不足解消のカギになるか」(2025年3月12日)。2025年の労働力不足幅についてはパーソル総合研究所を参照。

※8. 業種別・職業別欠員率:厚生労働省「雇用動向調査」2025年1-6月期の実績値。欠員率=未充足求人数÷6月末現在の常用労働者数×100(%)

※9. AIサーバー向け電力容量の日米比較:当社推計。米国のデータセンター全体の電力容量はBloombergNEFを参照し、Lawrence Berkeley National Laboratoryによる2023年のAIサーバー比率(約22.5%)を2024年にも適用して推定。日本のデータセンター全体の電力容量はIDC Japanを参照し、2024年末時点の2,365.8メガVAについて、データセンターのIT負荷は力率が良いことから有効電力では概ね2GW程度に相当すると当社にて換算。AIサーバー向け電力についてもIDC Japanを参照。

※10. 北海道・九州の再エネポテンシャル:上記1の環境省による全体の導入ポテンシャルに対し、環境省「再生可能エネルギー情報提供システム(REPOS)」における北海道・九州の再エネ導入ポテンシャルの比率を乗じて算出した当社推計。

※11. 最大電力需要:北海道は「北海道エリアの需給実績」(ほくでんネットワーク)、九州は「九州エリア需給実績データ」(九州電力送配電)。OCCTOの2025年度需要電力量を参考値とした概算。

※12. 系統連系線の容量:2026年4月時点。北海道本州間連系設備は2028年3月に300MW増設され合計1.2GW、中国九州間連系線は2039年3月に1,000MW増設され合計3.2GWとなる予定。

※13. 送電ケーブル(北海道-東京間HVDC)の費用:電力広域的運営推進機関 第20回 広域連系系統のマスタープラン及び系統利用ルールのあり方等に関する検討委員会

※14. 光ケーブル(配電網の光化)の費用:電力・ガス取引監視等委員会 第24回 料金制度専門会合。海底光ケーブルの費用は、日本海ケーブルシステム(NCS)で公表されている建設費用6,600万USD(1USD=156円換算で約103億円)と公表距離である約1,000kmを基に算出した推計に、プロジェクトごとの建設コストの差を考慮して幅を持たせたもの。同システムは2012年時点の建設計画に基づく公表値です。

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